「ソニーグループ寄附講座 クリエイティブエンタテインメント学」について

早稲田大学基幹理工学部表現工学科とソニーグループ株式会社は、将来のエンタテインメント産業をリードする人材の育成と新たな学問領域の創生を目的に、「ソニーグループ寄附講座 クリエイティブエンタテインメント学」を2025年10月に開講します。

映像、音楽、アニメ、ゲームなどのエンタテインメントコンテンツは、多くの人たちに豊かな体験、そして感動をもたらし、またファンコミュニティのようなファン同士のつながりの形成を促進するなど、今日の社会において多様な価値を生む源泉になっています。実際、国内エンタテインメント産業の市場規模は近年、拡大傾向にあり、海外でも中長期的な成長が見込まれています。2024年に日本政府が策定した「新たなクールジャパン戦略」では、コンテンツ産業は日本の基幹産業として位置づけられており、今後のさらなる発展が期待されています。
こうした成長を支えるには、進化するテクノロジーや社会の変化をより深く捉え、新たなエンタテインメントを持続的に生み出せる、高度で幅広い専門性や教養、そしてグローバルな視野を有する人材の活躍が求められます。そしてこうした人材を効果的に育成する教育プログラムの開発も今後ますます重要視されると考えられます。また、技術革新や社会変化などに伴って生じる未知の課題の解決に有効な学術研究を確立していくことも今後の課題の1つでしょう。

表現工学科は、科学技術と芸術表現の融合による、新たな社会ニーズへの対応と価値の創造への挑戦に端を発し、2007年に新設されました。設置して以来、エンタテインメント産業にかかわる多様な教育や研究に取り組んでおり、これまで多くの卒業生をエンタテインメント産業に輩出しています。
一方、ソニーグループ株式会社は「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパスの下、長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」を掲げ、世界規模でエンタテインメントに関する産業や文化の発展に貢献してきました。そして今後もこうした貢献をしていくためには、ソニーグループのアイデンティティを大事にしつつ、またエンタテインメントを巡る作今の状況を俯瞰し、先に触れた課題と向き合う必要があります。
こうした中,表現工学科の理念やこれまでの実績にソニーグループが共感し、表現工学の分野をさらに発展させるべく、このたび新設するのが「ソニーグループ寄附講座 クリエイティブエンタテインメント学」です。
本寄附講座では、将来のエンタテインメント産業の中核を担い、また牽引する人材の育成と、エンタテインメント産業の更なる発展につながる新たな学問領域の創成を目指し、様々な取り組みを展開していきます。その取り組みの1つとして、以下の2つの授業を開講します。

1.「クリエイティブエンタテインメント学Ⅰ:概念化」(秋クオーター)

エンタテインメントを巡る未知の問題に直面した際、しなやかに対処しうる素養の習得を目指す授業です。エンタテインメントに関連する世の中の事例を、その仕組みや影響要因、歴史的変遷と共に振り返り、こうした分析を踏まえ、未来の表現やコンテンツのコンセプトの提案に取り組みます。
初年度は、映像やオーディオ、コンテンツ制作を中心に、新たなテクノロジーがどのように世の中に展開されたかを、メディア論などの関連研究やソニーグループの事例を通じて解説します。また、今後コンテンツ制作において無視できない知識であるAIや倫理、安全性、インクルージョンの授業も行います。最終課題では、以上の授業で学んだことを踏まえ、未来の表現やコンテンツのコンセプトの提案に取り組みます。

2.「クリエイティブエンタテインメント学Ⅱ:具体化」(夏季集中)

「概念化」で提案したコンセプトの具体化を通じて自身の提案を精緻化し、新たな表現やコンテンツを提案する際に求められる説明力や思考力を鍛錬することを意図した授業です。簡易的なプロトタイピングを行いながら、提案内容を振り返り、試行錯誤的に精緻化することに取り組みます。

これらの授業を連続して受講することで、理論と実践を横断した、より深い学びを得ること期待されます。尚、エンタテインメントの分野は広範囲に及ぶことから、年ごとに異なるテーマにフォーカスし、授業内容を構成します。初年度は「リアリティの追求」をテーマに設定します。

本講座は、3年後の2028年を区切りとして、エンタテインメントを軸とした表現工学の新たな可能性を探りながら、その教育・研究を進化させていきます。3年間の成果と共に、表現工学の新たな可能性や更なる発展性について議論・共有するシンポジウムを開催する予定です。今後の「ソニーグループ寄附講座 クリエイティブエンタテインメント学」にご期待ください。

ソニーグループ寄附講座 クリエイティブエンタテインメント学Ⅰ-概念化-(2025年度)

「ソニーグループ寄附講座 クリエイティブエンタテインメント学Ⅰ-概念化-」は、不確実な未来の状況において、表現工学研究の専門知識を駆使し、新たな表現様式や価値の創造、またそこで顕在化する未知の諸問題の解決に挑み、貢献することのできる人材の養成を目指す授業です。この授業の最終課題では、特定のテーマ(2025年度は「リアリティの追求」)に関する未来の状況を想定し、その状況で人々や社会に求められると考えらえる表現やコンテンツの方向性を提案し、また多様な視点と根拠に基づき論理的に説明していただきます。第1~6週では、そのために必要となる専門知識や考え方を、産業・社会における実際の事例を通じて批判的に学んでいただきます。

 これまで、新たなテクノロジーやメディアは、人々の生活や社会、またコンテンツの生産・流通・消費など様々な分野において、多様な変化をもたらしてきました。先端的なテクノロジーが私たちの日常生活に遍在し、浸透する現在、未来の状況を考え、提案していく上で、こうした過去の事例から学ぶ点は多く、その知識を有効に活用していく思考を習得することが今後ますます重要になるのではないでしょうか。第1週前半では、こうした展望に基づき、過去の事象に遡行し、メディア論などの関連研究を適宜参照しながらケーススタディを行います。第1週後半、そして第2週では、演習を通じ、最終課題を遂行する上で必要な知識や考え方について学びます。
 続く第3~5週では、フォーカステーマである「リアリティの追求」に沿って、映像、オーディオ、コンテンツ制作に関して、新たなテクノロジーやメディアが世の中にもたらした変化や影響について、ソニーグループにおける比較的最近の事例を通じて学んでいきます。第3週は冒頭で第3~5週の概要について解説した後、そのようなテクノロジーの事例として、映像とオーディオに関するソニーグループの先端的なテクノロジーの紹介とデモンストレーションの機会を設けます。第4週は、映像、オーディオ技術、そしてそれらのテクノロジーを用いたメディアにおいて流通してきたコンテンツの変遷について解説し、第3週で紹介したテクノロジーの想定される活用事例や展開について解説します。続く第5週では、映像コンテンツ制作の変遷と近年の状況、今後の展望について、こちらもソニーグループの先端的なテクノロジーの紹介とデモンストレーションの機会を交え解説していきます。
 第6週は、今後、テクノロジーを活用したコンテンツ表現に携わる上で知っておくべき知識でもある、人工知能(AI)や倫理、インクルージョンについて取り上げる。近年、AIに関するテクノロジーの発展は目覚ましく、エンタテインメント領域の様々な場面で更なる活用が期待されています。しかしその一方で、創造活動においてAIを活用するにあたり、様々な点に留意しなければなりません。たとえば人権や著作権を侵害するようなケースが挙げられます。他にも、AIを含む先端的なテクノロジーが人々や社会にもたらす負の側面も無視できません。たとえばディープフェイクやダークパターン(ディセプティブデザイン)といった社会的、倫理的な課題、そしてコンテンツ利用時の安全性の問題などが挙げられます。このように、先端的なテクノロジーの活用にあたり留意すべき点は少なくありませんが、有効に活用することで、年齢や障がいなど個人の特性にかかわらず、エンタテインメントコンテンツを共に楽しめるようになることが期待されるなど、様々な発展性が見込まれます。授業では、以上に関連する基礎的な知識や考え方、留意すべき点と共に、ソニーグループにおける事例を織り交ぜつつ、フォーカステーマである「リアリティの追求」に関連したトピックスを中心に解説していきます。

※授業の内容は諸般の事情により内容を変更する場合があります。

ソニーグループ寄附講座 クリエイティブエンタテインメント学Ⅱ-具体化-(2026年度)

こちらは2026年度のシラバス公開後に掲載します。

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2025.9.2
ソニーグループ寄附講座 クリエイティブエンタテインメント学 開講記念シンポジウムを開催しました

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